待望の鍋三昧を春の初めに「比良山荘」

桜の季節もあっと言う間に終わってしまい、ああ、いよいよ暑くなるのだろうなと思っていたら急に冷え込んだりと実に体調を崩すには良い気候なのに崩れきらない憎いヤツ、貴方のてつやです。

ソメイヨシノの季節も終わろうかという四月の某日滋賀県の山の中、標高308mにあるという「比良山荘」へとうかがう機会がありました。もうね、こういう機会は逃したくない方の人種な私と御料人様ですから万難を排していそいそと出かけたわけです。ええ、欲望という名のJRに乗り込んで。

京都駅からタクシーで一時間少々かけてやって来ました「比良山荘」。もうこの名を聞けば泣く子も腹が減るという素晴らしい料亭。その店構えからして「どうだ旨そうだろう」と語りかけてくるような気がするとかしないとか。いや本当に立派な店構えです。女将さんに迎えて頂きお店の中へ。

いやーこりゃあ素敵空間ですわ。もうこのままここに住んでしまいたい衝動に駆られるほどに素敵家屋。本日はワイン会ということもあって、色々とご挨拶やら聞きながら腹減ったなぁと泣く子も腹減ってしまいましたよ泣いてないけど。そんな所に先付けが。【タラの芽とコシアブラの天麩羅】から。そうか、こちらの方は神戸よりも少々春が遅めだから旬なのですね。うん、ほろ苦旨い…あれ?苦くないよ?でもそれがまた旨い。

そして【八寸】ですが、これまた素敵な器に入ってますなぁ。

料理の方も実に山の幸。鮒寿司のように見えるのは鮎のなれ寿司。モロコやら岩魚の子やらタテボシガイもう何というかこれでもかと琵琶湖の名物に山菜が天こ盛り。いやぁ素晴らしい。山菜に対して余り覚えていないのはいつものことなので気にしない。

御機嫌で喰っていると窓の外には雪。え?いや雪?なかなか風流じゃあないですか。四月だけど。

刺身三種は【鹿のタタキ、鯉、岩魚】という素晴らしさ。またしても山菜がちりばめられています。もちろん全て食べられますよといわれては食べましたよ、ええ。美味しいです。でもそれよりも鹿!ですわ。いやぁ日本のジビエは良いですなぁ。魚も当然旨いですが、鹿肉ってのが心躍るというものです。ねっとりとした舌触りと山椒のソースが堪りません。

焼き魚いただきます。【稚鮎炭火焼】は蓼酢で。てかそのまんまで既に完成された旨さです。ああ、この芳ばしさが酒をすすめるのです。今回、ワイン会ですが、日本酒も出して頂いて、やはりこの手の料理には日本酒は必要だと実感するというものです。

焼き物第二弾は【鰻の花山椒添え】。琵琶湖の鰻、素晴らしい。ふんわりと焼かれた鰻は香ばしい皮の風味とトロリと溶ける優しい脂が心でろでろにしちゃいます。そして添えられたのは花山椒。この季節だけの特別食材なのです。こいつのわずかな刺激が更なる食欲をかき立てるというものです。

いよいよメインとなります鍋に移るわけですが、ここでやって来たのは七輪に大ぶりのいこった炭。おおぉ、テンション上がるぜ!ヤキニキストとしてはこういう炭火の勢いがハートに火をつけてってなもんです。ドアーズが好きなわけじゃないけど。

まずは野菜。ってか山菜。【カタクリの花、セリ、天然クレソン、木の芽、京都大原野のタケノコ】とまぁ実に贅沢三昧。

そして、肉。そう待ってましたの肉。なんと【熊鍋】なのです。いやー熊は時々食べる機会がありますが、こういう純和食での熊鍋。楽しみ以外の何ものでもなく。見目麗しき熊肉はその脂に心奪われますね。牡丹よりもより白い、その皿には美しい花が咲いています。

で、実は今回の主役なのですが熊に非ず。このわずかな季節にしか味わえないという【花山椒】なのです。いやー、凄いわ。天こ盛りの花山椒なんて贅沢以外の何ものでもなく。暇なので検索してみたら100g6,000円とかぬかしてやがる。ははっ!もういいや、これ以上は心の毒だわ、楽しみだなぁ。

お鍋番はご店主自ら仕切ってくださいます。うふ、何という幸せ。鍋はね、料理人がしっかりと仕切ってくれるのが一番美味しいのですよ。スキヤキでも全部お任せで食べるのが一番美味しいのです。良い塩梅で煮えた頃にご店主から「どうぞ」のお声をかけて頂き箸をのばす。

ああ、なにこれ、旨っ!たっぷりの花山椒と一緒にいただく熊の脂は今まで食べてきたものと明らかに一線を画してますわ。もうね熊特有の臭みだと思っていたものは手当の差だということがよく分かるのです。ジビエ特有の肉と脂のガツッとした味わいは損なわず、まるで酸化のない美しい牛脂の香りがしています。こりゃだめだ。二度と他の熊は喰えないかもしれない。天地がひっくり返りそうなこの衝撃。

さらに花山椒をががっと加えて第二陣が。

今度は赤身と脂のツープラトン。わはははは。これはいよいよ衝撃的です。赤身の歯応えに脂のブリッとした食感が口腔爆撃。旨さが口の中で弾けるのがよく分かります。うん、マジで分かる。真剣と書いてマジと読む、本気と書いてガチと読むくらいに。これは人生で一度は食べておくべき肉であると断言しておきましょう。

あっと言う間に食べきってしまいましたよ、うん。まだまだ食べれるけどこのくらいでおさえておくのが日本料理の奥ゆかしさなのかな…とか勘違いしていた時期が私にもありました。ええ、このまま続きましては【牡丹鍋】へと移行させて頂きます。このまんまの鍋に猪肉が放り込まれていくのです。やったー!さらにニククエルゼ!

いや妙にクレソンとか残っているからおかしいなぁとは思っていたのですよ。そして恐ろしいことにご店主自ら花山椒のお代わりを厨房まで取りに行ってくださいました。そう、花山椒もお代わり状態。いいの?本当に良いの?もちろん我々は大歓迎でございます。

牡丹鍋美味しいぜ!…でもねその前の熊鍋が余りに美味しすぎて猪肉の旨さが印象薄いのよ。まぁほらクールダウンだと思えばね。美味しいことに間違いはないけど、もしかしたら熊鍋の熊汁で美味しいのかとか色々と頭によぎるのですよ。といっている端から投入される【とち餅】なのです。え?ずっと椎茸だと思っていたよ。いつになったら入れるのかとやきもきしてたけど栃餅だったよ。

そしてやっぱり〆はご飯ですな。タケノコに恐らくコシアブラが用意されてます。ああ、日本に生まれて育って、鍋の最後はやっぱり米を食わねばね。

煮込んだ山菜にご飯を放り込み。

玉子を回しかけてぐつぐつと。

最後に木の芽を散らせて【雑炊】の出来上がり。

これを自家製お漬物と一緒にいただくわけですが。うわーーーっさっきまでの熊と猪がこの雑炊に全て溶け込んでますわん。いやこりゃいいや。この雑炊だけで昼の定食作って欲しいよ。他人が食べ終わるまで待たされるというハンデを背負ってでも毎日食べたい健康食ですね。

ここでお代わりしたいけどグッと我慢の子なのです。いや、もちろんお代わりしたけどね。居候三杯目はソッと出し、の三杯目を我慢したんだよ、うん。デザートは【桜餅のジェラート】なのです。丸ごと桜餅がジェラートに。なんという素敵な創作デザート。和食といえばフルーツと勝手に思ってましたが、季節を彩る冷菓とはやられました。旨かった。

満足。まさに満足でした。ちなみにこれが昼飯だという恐ろしさ。料理に合わせた素晴らしいワインも含めて全てが見事に調和されておりました。御馳走様でした。また機会があれば是非とも来たいお店ですね。次回は何一つ遠慮しないように食べまくりたいと思います。

というのもこれから神戸まで大急ぎで帰って次の宴会が待っているのです。いやいやどれだけ多忙なのかと。しかもポッサムチプでワイン宴会ですからね。さぁ夜に備えてしっかりと腹を減らさねば。

結局、控えたのは雑炊の三杯目だけという莫迦っぷり。
そりゃ太りますわな〜。

今回のお店:比良山荘

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