北海道は色々とあったのですが、全部書いてたらいつまでも終わらないので大事なところだけを書いていこうとしたら食べ物しか残らなかった、貴方のてつやです。
札幌でガッツリバーガーをいただいたので消化を促す為に歩くことにしました。次の店は江別にありますので欲望という名のJRに乗ってやって来ました野幌駅。ここからレストランまでは歩いて20分ほどらしいのですが、駅に着いたのは15:00。店の予約は18:00。つまり今から3時間歩きます、大した目的もなく。
ええ、もうそのくらい切羽詰まって腹一杯ですから。結果だけお知らせしますが、この日の歩いた距離は朝から夜まで全部合計して21kmでした。ハーフマラソン歩きました。主に江別で歩きました。さすが北海道、歩く場所には困りませんでしたが雨の降る中歩行者は我々のみ。全ての人は自動車という文明の利器にて移動してました。まぁ当たり前ですが。でも歩いたおかげで見えてくる風景もあるのです。
アスパラ畑。いやー、アスパラが大地からにょっきり生えているのを路傍にて見つけた感動は何ともいえませんね。当然今から食べるのですからね。他にも牧場で乳牛、トンデンファームで馬と山羊、住宅街の公園みたいな所で授乳中のキツネなども見かけました。わりと充実した道程でしたわ。
さて、そうこうしているうちに時間となりましたので本日の晩餐会場、「リストランテ薫(KAORU)」に到着しました。素敵な佇まいのお店は創作イタリア料理と銘打つにふさわしい素晴らしさ。
店内は上がり框にて靴を脱いでの入店。席はテーブルと座敷とどちらがよろしいですか?と聞かれちゃいました。ええ、そりゃ座敷でしょう、面白そうですから。案内されたのは完全個室のお座敷。いや、もうねどうすんのよこれ。すげぇ豪華すぎてびびりますわ。
テーブルには、これなんていうのか知らないのですが長板膳?てのですか?漆塗りですよね。本当にイタリアンですかと心の慟哭が響き渡ります。素晴らしい。
さて、そんな訳ですっかりと雰囲気に気圧されつつも食い始めたらこっちのもんです。最初にいただくのは【金目鯛の皮目焼】。伊東であがったという、お魚コンシェルジュから仕入れた逸品の金目鯛を2時間かけて皮目焼にしたというお料理。これがもう何とも旨い。旨いで終わらせてしまって良いものかという旨さ。皮目をバーナーで炙ってひょいと出されたものとは違い、炭火でじっくりと焼かれた皮はバリッと香ばしく、身は実にやんわりとそれでいてしっかりと火が仕事しています。添えられた水茄子と文旦も魚の味を引き立てるの一役買っているのです。うう、これ最初に出てくるのかー。
二品目は【厚岸産牡蠣】ですか。厚岸、道東に旅すれば必ず食べに行くという厚岸。こちらの真牡蠣はかなりの大ぶり。こちらは下からは炭火、上からは藁を焼いての加熱だそうです。その時椎茸と昆布の出汁をたっぷりと吸わせているので旨味がぎゅっとアップして、三大旨味を全て凝縮されてます。「出来れば一口でお召し上がりください」との事。いや、これ噛み切っては旨味が流れちゃいますよ。ええ、当然一口で頬張りますとも。藁の焼けた燻製のような香りが鼻腔をついて、その後からぶわっとあふれ出る旨味、最後に牡蠣の底力が磯の旨味と一緒にやって来るという何段階の旨さのでしょうか?こりゃたまりません。牡蠣の大革命ですわ。
そしてさらに魚介です。【トキシラズのポワレ】なのです。そう、この季節といえばトキシラズ。今回はどこであがったトキシラズかお訊きし忘れましたが、こちらもじっくりと良い仕事されています。もともと身が緩いのがトキシラズですが、最早ここまでくると口の中で溶けるという方が正解なのかもしれません。そして添えてあるのがフライドポテトとマッシュポテト。これがなんと別の種類の芋じゃないですか。キタアカリとピルカを使い分けて味と食感を楽しませて頂けます。
ここで口直しのパスタ、【冷製タリオリーニ】です。一口サイズのパスタは口直しに良いですよね。というかこれタリオリーニですか?いや、ツルリとした見た目と透明感は稲庭うどんを思わせます。早速いただきます、って一口でですが。おう、このぶりっと押し返してくるような食感。そして強烈な鳥の旨味。高坂鶏のスープで作られたそうで、その強烈な旨味が存分に麺と一緒に攻め込んできます。こりゃあいい!過去のどの手打ち麺とはちがう食感です。アルデンテとかそういった方向とはまるで違う、強烈な麺の主張にノックアウトです。
そうそう、ここまで既にワインは泡、白、赤が開いてます。泡はお店のチョイスでお願いしましたが白と赤は御料人様がセラーから選びました。好みのワインを伝えればお料理に合わせて出して頂けるそうですが、やっぱりセラーって見てみたいじゃないですか。そんな訳で自分チョイスとなったのです。
閑話休題。口直しが出たということはお分かりかと思いますが、ここからはいよいよ肉料理へと突入します。北海道といえばこれでしょう。【エゾジカのコトレッタ】です。鹿、ええ、大好物の1つです。ようやくこのサイトらしく肉がやって来たじゃないですか。白糠産のエゾジカ。以前、白糠まで鹿喰いに行きましたよ。流石は食材にこだわりのあるお店。いやーこれは美しい。愛農ポークの背脂を巻きじっくりと2時間ほどかけて火入れされたコトレッタは鹿の血の苦みや臭さもなく美しく仕上がっております。
これは頸動脈を一撃で打ち抜いて、鹿が暴れることなく事切れたことで肉に血が回らない様に仕留めたからこそ出来るジビエの極致。鉄臭さも味の内ともいえますが、これだけ綺麗に仕上げていればそれも邪魔なものですね。
無駄なドリップがさらに落ちることなく、旨味が肉の内へ内へと凝縮されているのは一目見ただけでわかりますが、口含んだ瞬間の感動はそれ以上なのです。付け合わせは旭川・のなか農園のアスパラガスと蕗味噌。蕗のほろ苦さとアスパラがジビエである鹿との見事な調和になっているのです。
お店の方から、あと二品パスタとメインの肉が出ますが量は大丈夫でしょうか?とのお申し出。いや、そういや腹一杯過ぎて困ってたはずなのに全く忘れてましたわ。ええ、大丈夫です、普通にお願いします。相変わらず旨いモン喰っているといくらでもいける胃袋です。なので普通の量のパスタ。【ウニとイバラガニのキタッラ】。肉だ肉だと言っていたけどウニとカニ。いいじゃあないですか、口直し口直し…って何これ旨すぎ。余市の塩水ウニとイバラガニの身、さらにカニミソまで使ったキタッラは全ての海の旨味を纏ったシルクのような旨さです。ああ、こりゃ昇天するわ、なにが口直しだか。
そしてとうとうやって来ました。本日のメインです。そう【ジビーフのロティ】です!ジビーフ。実はこのお店に入った上がり框にお花があったのですがそこに見知った名前が。そうジビーフの関西での重鎮のお名前が。そして当然のことですがそのジビーフが調理されてきたのです。今回はヒレ肉をじっくりと時間をかけて調理して頂きました。これがもう素晴らしい。ヒレ肉ってのは火を入れすぎればカスカスになって旨味がなくなり、火入れが足りないとドリップでグズグズになるのですが、肉の芯までキッチリと火が入っているのに、その軟らかい弾力と赤身の旨さは全く損なわれていません。もうねここのシェフはいったいいつ寝ているのだろうかと心配になるほどの仕込み時間がかかる料理のオンパレード。
そして付け合わせのホワイトアスパラと菊芋ソースも素晴らしかったのです。いやー、喰った喰った。デザートは【フルーツ盛り合わせとジェラート】。メロンは天使音(あまね)と苺はよつぼし、そしてピスタチオのジェラートとこちらも良質な食材を惜しげもなく。基本的にフルーツのことはわからないのですが、非常に美味しくいただきました。糖度が無駄に高いだけの旨味ではなく素材の旨さをいただきました。
いやー御馳走様でした。本当に大満足。せっかくなので最後にグラッパとエスプレッソで【カフェ・コレット】をいただきました。こうやってイタリア料理であることを最後に認識しておくことにします。本当に旨かったのです。
お店に着くまではあまりの腹一杯さにどうしたものかと思ったのですが、食べ始めた瞬間に腹が減るというミラクルボディで見事に美味しく食べ切らせて頂きました。今回予約は御料人様が早めに取ってくださったのですが、その直後にミシュラン一つ星をとって、恐らく今は大変な事になっているのかもしれません。このじっくりと最高の料理と接客なのであまり多くの予約を取れないそうで。本当に今回はラッキーでした。
また次回も別の季節に別のジビエを期待してうかがいます。
幸せなひとときありがとうございました。
今回のお店: